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サン=テグジュペリの50フラン紙幣

J’écris sur un petit papier le nombre de mes étoiles.

Et puis j’enferme à clef ce papier-là dans un tiroir.

自分の星の数を小さな紙に書きつける。

そして、その紙を引き出しに入れて鍵をかける。

これは、『星の王子さま』13章に登場するビジネスマンの言葉ですが、彼は「所有にこだわる大人」の象徴だと見て取れます。しかし、引き出しに入れておくだけではもったいない「お金」があります。

それは、『星の王子さま』の作者サン=テグジュペリが描かれた50フラン紙幣です。今ではもう使用することも交換することもできませんが、ご存じでしょうか(覚えていますでしょうか)。この紙幣には、眺めてみると気づく、小さな物語がたくさん詰まっているのです。

2002年1月1日、欧州単一通貨:ユーロ(€)の貨幣の流通が開始されました。ユーロに切り替わる前、フランスでは独自通貨フランス・フラン(₣)が使用されていました。そして、1993年10月から流通した50フラン紙幣の肖像はサン=テグジュペリだったのです(ちなみに、20フランは作曲家のドビュッシー、100フランは画家のセザンヌ、200フランは技師のエッフェル、500フランは物理学者のキュリー夫妻でした)。

この50フラン紙幣、星の王子さまやサン=テグジュペリ好きな人にはたまらないデザインになっています。お手元にある方は、ぜひ一緒に見てみましょう。

表面のデザイン

右側にはサン=テグジュペリの肖像画があります。

中央には、ヨーロッパとアフリカを中心とした地図があり、飛行家であったサン=テグジュペリが飛んだふたつの航路が赤線で引かれています。

ひとつ目の航路(左)は、フランス・トゥールーズ−セネガル・ダカールの航路。これは、サン=テグジュペリが1926〜27年に郵便飛行士として郵便飛行に従事していた航路で、ラテコエール社(のちのアエロポスタル社)のヨーロッパ−アフリカ路線の主要区間です。

ふたつ目の航路(右)は、フランス・パリ−ベトナム・サイゴンの航路。これは、サン=テグジュペリが1935年12月に飛行記録の更新に挑戦したときの計画航路です。結果としてはこの赤線の途中、リビア砂漠で墜落してしまいました。砂漠を三日間さまよい歩き、ベドウィンの隊商に奇跡的に発見されることで無事生還することができ、このときの経験が『星の王子さま』の物語の冒頭部分(2章)となっています。

地図の左上には、郵便輸送で使われたラテコエール 28(Latécoère 28)とみられる機体を正面から描いたシルエットもあります。

左側には『星の王子さま』の挿絵も。上部には、見る角度によってジェード(翡翠)グリーンからターコイズブルーに色を変える「ゾウをのみ込んだウワバミ」、下部には小惑星B612の上に立つ星の王子さまがいます。

見逃しがちなのは、「ゾウをのみ込んだウワバミ」上部の8本の細い線のようなもの。実はこれ、以下の『星の王子さま』第7章の文章がマイクロプリントされています。

Il y avait, sur une étoile, une planète, la mienne, la Terre, un petit prince à consoler!
Je le pris dans les bras.

ある星のうえに、ある惑星のうえに、つまり、ぼくの星、地球に、慰めてあげなければならない小さな王子がいたのだ!ぼくは彼を抱きしめた。

中央にはサン=テグジュペリの肖像画の透かしがあり、その下には「ツノの生えた羊」が。

えっ、見えないですか。

心で見なくては、よく見えないです(UVライトを当てると蛍光で浮かび上がる仕組みです)。

裏面のデザイン

裏面には、砂漠上空を飛ぶブレゲー14(Breguet 14)が大きく描かれています。こちらも郵便輸送に使われていた機体ですが、表面のラテコエール 28(Latécoère 28)よりも前から使用されていたもので、サン=テグジュペリが初めて郵便飛行したときの機体でもあります。

右側には表面のものを反転させた小惑星B612の上に立つ星の王子さま、かと思いきや、よく見ると表面は緑色の上着に白色のズボンですが、裏面は白色の上着に緑色のズボンです。

そして、フランス銀行(Banque de France)の三役(Le Secrétaire Général/Le Contrôleur Général/Le Caissier Général)の肩書きとそれぞれの公式署名、そして紙幣の発行年が記されています。

これは「1993」年発行のものですが、初期に発行されたものには左の画像のように誤植があったんです。なんと、表面のサン=テグジュペリの名前がSaint-ExupéryではなくてSaint-Éxupéryと、「E」の上にも「É」とアクセント符号が付いてしまっています。「Antoine de Saint-Éxupéry 1900-1944」と1行で書かれていたものはのちに修正され、「Antoine de Saint-Exupéry」「1900-1944」と2行で書かれるようになりました。

以上のように、紙幣1枚を眺めてみるだけでも、サン=テグジュペリと『星の王子さま』へのオマージュが細部まで詰め込まれている、引き出しに入れておくだけではもったいない紙幣のお話でした。

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